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  • チェックアイテムについて教えてください。
  • チェックアイテムについて教えてください。

要注目のチェックアイテムですが、みなさんはどこまでご存知でしょうか?一言でチェックといっても、種類や辿ってきた歴史など、堀り下げていくと、そこには様々な背景があります。代表的なチェック柄の歴史や最近の傾向などについて、『here and there』や『拡張するファッション』でおなじみの編集者、林央子さんに答えていただきました。

林央子(編集者)

—チェック柄は、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか?
林:チェック柄というと、スコットランドのタータンが有名だと思います。タータンの語源は、フランス語(tiretane 毛織物)・スペイン語(tiritana 彩色織物)・ゲール語(tarstin 交叉)などだと言われています。スコットランドでは、伝統的に格子柄の大きい布をベルトで巻いて着る装いがあったようです。遡ると10~11世紀には、用途によってタータンの柄が使い分けられていました。ドレスとしてのタータン、狩猟用のタータン、族長が着るタータン、喪服としてのタータン、王室のタータン、ミリタリーのタータン…というように。紋章のように、その一族のための固有のタータン柄があり、一族の婦女子が柄を織る風習があったのですが、18世紀にタータン禁止令が出されて、一度廃れてしまいました。現在残っているモダンなタータンは、ジョージ4世によって、19世紀に再度作られ始めたものだそうです。クラシックのタータンは、天然の樹皮やその地方の植物で染めていたものらしく、現在は肖像画や文献でしか残っていません。モダンタータンの普及は20世紀なので、比較的最近ですね。化学染料の発達とともにいろんな柄が出て、370種類くらい名前がついたタータン柄があると言われています。また、タータンのコレクターが1949年に自分のコレクションを公開してから、ファッションデザイナーが既製服に取り入れるようになりました。大きい柄だけど動きによって見え方が異なるから、デザイナーにとって面白い素材だったんでしょうね。

—日本はどうだったのでしょうか?
林:日本のチェック、つまり格子柄が生まれたのは鎌倉時代らしく、スコットランドと時期はそう変わらないと思います。縦糸、横糸の色を変えていく織物ですよね。織物を織っていく時に、同じ色だったら単調だけど、横糸も縦糸も時々色を変えて、何本目の糸と何本目の糸の色を変えていくとこんな柄ができる、という変化や手法を記録して、より美しい、格好いいものが作られてきたのでしょう。
—代表的なチェック柄について、教えていただけますか?
林:タータンチェックは一族に固有な物で、色の組み合わせや交わる線の太さや細さによって多様な柄が生まれています。例えば、濃紺と深緑の格子に黒い線のブラック・ウォッチは、見張人が夜着るような目立たない柄で、毛布やパンツなど男女問わず幅広い用途に使われています。ブロックチェックは、碁盤の目のような等間隔の格子柄。典型的な幾何学模様です。グレンチェックは、スーツなどによく使われる、細かな格子の四角形を組み合わせて大きな格子柄を構成したものです。
—チェック柄には、どんな印象を持っていますか?
林:どちらかというと、お父さんやお爺さんが着ていたスーツの柄といった男っぽいアイテムだという印象です。ガーリーな世界とは相容れないというか。例えば、チェックのネルシャツといえば、女の子がボーイフレンドのシャツを借りて着崩すようなイメージで、マニッシュなイメージがあります。

—他にどんなイメージがありますか?
林:ユースカルチャーで言えば、伝統・家族のグループを象徴する本来の用途とは異なるメッセージを込めて着ることで、パンクやグランジとも結びついたと思います。ジョニー・ロットンがタータンチェックのシャツを着ていたように、伝統の退屈な感じを着崩すことで打ち破る、みたいなことだったのかなと。また、ヴィヴィアン・ウエストウッドなどのデザイナーが着るものに文化的なメッセージや態度を込めて、西洋絵画や様々なカルチャーを服作りに応用している中で、タータンを何度も再生させていたことは印象的です。あとは、アウトドアのイメージがありますね。

ドアーズ:チェックのシャツやブランケットをアウトドアウエアでよく見かけます。

林:他には、Vilaの魔法瓶で赤いタータン柄のものがありますよね。子供の頃に母親が使っていたのをよく覚えているのですが、模様がとても好きです。あと、私が編集し、マイク・ミルズがデザインしたホンマタカシさんの写真集『ベイビージェネレーション』の本の表紙が、フランスのクレルフォンテーヌ社のノートのチェック柄でした。パリの代表的な文房具で、必ずこのノートでパリコレを見ているエディターもいました。マイク・ミルズがこの柄を表紙にした理由は、フランスに憧れるアメリカの女の子たちもこのノートが好きだから、ということでした。
—お気に入りのチェックアイテムを教えてください。
林:『コズミックワンダー』のワンピースです。グレー系の濃淡だけのワントーンは、無地をよく着る私にとってはより着やすい印象があります。元々のチェックには色にも意味合いがありますが、それをモダンにする過程で、柄は残してトーンは一種類、といったデザインに変わっていったのではないでしょうか。ワントーンだと、伝統的な柄でもぐっとシティウエアに合わせやすくなります。『コズミックワンダー』のアイテムだと、今度出される財布も気になります。江戸時代に兵庫県で始まった丹波布という織物が使われていて、それも格子柄でした。丹波布は、丹波地方に自生している植物から染めた糸を使っていて、クラシックタータンと同じです。もともと江戸時代に布団として使われていた素材だったそうです。普通なら捨ててしまう、絹の屑になっていく部分と綿の織物なので、糸に表情があってぼこぼこしていて、手触りがあり心地よさがあります。
林:チェックはカジュアルですよね。覚えているのは、エレン・フライスも、『コズミックワンダー』のチェックのシャツを「私が持っている唯一のチェック」と言っていた気がします。アウトドアやボーイフレンド的なアイテムをワードローブに持たない人にとっては、『コズミックワンダー』のチェックはちょっと都会的な感じがするのではないでしょうか。パリジェンヌとしても、色の取り合わせに落ち着いた感じがあって手を伸ばしやすいかもしれないと思います。チェックについて考えるとき、逆にチェックとは遠いイメージのデザイナーを考えてみるのも面白いです。私が見ていた2000年前後のパリコレでは、『マルタン マルジェラ』や『ヘルムートラング』は無地が多く、チェックの印象はありません。また、『ミナ ペルホネン』の服もチェックのイメージからは遠い感じがしますよね。一般的には、『バーバリー』の柄のように、活動的で若々しいイメージがチェックにはあると思います。

ドアーズ: 2、3年前はカジュアルな印象が強く、女性からすると取り入れ方が難しい印象を持たれることが多かったと思います。それをワントーンにしたり、色味を抑えたことで、女性の方にも取り入れられやすくなり、トレンドとして着られている方が増えています。

-そうなんですね。
ドアーズ:色味のある派手なチェックよりも、落ち着いたソリッドカラーやクラシカルなチェック、ツートーンのものが好まれているように感じます。『O'neil of Dublin』というお店で取り扱っているアイルランドのブランドがあるのですが、林さんがおっしゃられていたように、この『O'neil of Dublin』も民族衣装であるキルト製品をつくる名門ファクトリーブランドで、アイルランドの歴史と伝統の深さを感じ、その一族のための固有のタータン柄があることを私自身が知るきっかけになりました。あと代表的なものとして、『TWEEDMILL』や『Harris Tweed』といった小物系のブランドもインポートでお取り扱いしています。アウター、重衣料が増えてくると寒色系が多く重たくなりがちなので、小物でぱっとするチェックを巻きたい、持ちたいというお客様は多いですね。

林:たしかに秋冬はそういう感覚になりますね。ベージュのコートを着る時にチェックの手袋を合わせてみたり、小物でアクセントをつけて装いを楽しむ感じです。
—このストールはどこのものでしょうか?
林:夏休みの終わりにロンドンに行った時に、すごく寒かったので鉄道の駅で買ったもので、どこのブランドというわけではないです。これもワントーン的な感じですね。あと、今日は持ってこられませんでしたが、大判のストールで気に入っているものがあります。カート・コバーンの水色のネルシャツをモチーフにしたもので、毛羽も全然ない、フリンジが長くついた秋冬の大判のストール。『ファセッタズム』のものです。秋冬だと温かみのある色や素材感が多くなると思いますが、このストールは毛羽もなくてフラットな素材で色も水色系、というように、クールなイメージでしたが、それが逆に新鮮で気に入っていました。チェックの格子が、細い線の重なりで構成されていて、繊細だけど表情のある柄でした。
林:夏休みの終わりにロンドンに行った時に、すごく寒かったので鉄道の駅で買ったもので、どこのブランドというわけではないです。これもワントーン的な感じですね。あと、今日は持ってこられませんでしたが、大判のストールで気に入っているものがあります。カート・コバーンの水色のネルシャツをモチーフにしたもので、毛羽も全然ない、フリンジが長くついた秋冬の大判のストール。『ファセッタズム』のものです。秋冬だと温かみのある色や素材感が多くなると思いますが、このストールは毛羽もなくてフラットな素材で色も水色系、というように、クールなイメージでしたが、それが逆に新鮮で気に入っていました。チェックの格子が、細い線の重なりで構成されていて、繊細だけど表情のある柄でした。
—ドアーズのアイテムの中で、気になるものはありますか?
林:このスカートはどこのものですか?

ドアーズ:『O'neil of Dublin』のものです。本来は伝統的なキルトスカートのデザインで、一枚仕立ての生地をベルトで留める巻きスカートなのですが、より今年らしく履いていただけるようロング丈にしています。これに革靴を合わせていただくと、トラッドな印象を与えてくれる今シーズンのおすすめアイテムです。

林:色は茶系が人気ですか?

ドアーズ:そうですね。あとはベージュ系の柔らかい色合いのものとか。様々なバリエーションのお洋服に合わせていただきたいので、色違いではブランドの歴史を感じさせるキャッチーなタータンチェックもご用意しており、コーディネートの主役にぴったりです。

林:こういう丈は着やすいですね。キルトスカートとして見知っているチェックの素材が女らしいシルエットのロングスカートになっていて新鮮です。

ドアーズ:ウエストがゴムのタイプのスカートは、軽くて履きやすいとご好評をいただいています。

林:動きやすいし。
林:フェミニンな形のブラウスもあるんですね。

ドアーズ:チェックシャツは男性的な印象が強くなってしまうので、ブラウスのような形でフェミニンな印象に仕上げたものをご用意させていただきました。一枚で着られて、スカートにもパンツにもどちらでも合わせていただきやすい形です。

林:チェックのシャツは多いですが、ブラウスはあまりないですよね。

ドアーズ:素材も温かみのあるウールを使った仕上げにして、より長い期間着ていただけるようにしています。
ドアーズ:素材も温かみのあるウールを使った仕上げにして、より長い期間着ていただけるようにしています。
林:このマニッシュなジャケットは、女性のためのものですか?

ドアーズ:ややオーバーサイズのテーラージャケットは、同生地のトラウザーもご用意しているので、セットアップで合わせていただくときっちりした印象になります。きちんとした場所に着ていくための使い方もあるし、かっちりしすぎずにデニムパンツやスカートで合わせて、普段着としてもお使いいただきたいです。
—他のアイテムとまた印象が変わりますね。
ドアーズ:この時期のパーカーやカーディガンなどのアウターアイテムの一つとして、ジャケットも見ていただいていますね。別のチェックだとまた違うのでしょうが、クラシカルなグレンチェックなのでご好評いただいていると思います。中に着るものを選ばないように、あまりチェックを主張しすぎない配色にしています。ファッション性は取り入れつつ、素材や取り扱いのしやすさ、着心地の良いシルエットをご提案しています。
林:このストールはリバーシブルになっていますね。

ドアーズ:グレンチェックとタータンチェックの違った柄を取り入れたストールです。

林:幾何学柄って、はっとするものがありますよね。柄物は秋冬に多いですか?

ドアーズ:そうですね。冬物ではウール素材ですとか、温かみのある素材のアイテムが多いです。夏はリネン素材の清涼感あるトップスを出していたのですが、秋冬とは色合いが異なりますね。冬になるほど派手な色物、深みのある色が多く感じます。
林:チェックという柄は、よく知っていて懐かしいという感覚を多くの人が持つと思うんです。ファッションアイテムとしては、そこにどう新鮮さを持ち込むかということがあると思いますが、ストールを首に巻いたときに、そのファブリックから出るボリューム感や、小物に部分的にチェック柄を取り込むことで視覚的に変化が生まれることなどで、着こなしの楽しさを提供してくれるアイテムだと思います。空が暗く、どんよりした空模様の悪天候の日には、大柄なチェックが長靴や傘にあると、はっと目をひいてフレッシュな気がします。個人的には、最近チェックを思いきり大きく拡大したような柄のテキスタイルがグラフィカルで気になっています。さまざまな国のテキスタイルを蒐集展示している自由が丘の岩立フォークテキスタイルミュージアムでは、ラオスでつくられた手織り・手紬・天然染めのチェックのショールを気に入って購入しました。人類の織物の歴史でチェックは、ストライプとならんで普遍的な柄。文化の違いをこえて共通するものと、それぞれに固有なものを比較してみたら面白いのではないかと考えたりしました。
林央子
様々な媒体への寄稿をまとめた著書『拡張するファッション』は2014年、同名の展覧会となって、水戸芸術館現代美術センターと丸亀市猪熊弦一郎現代美術館を巡回。編著に『拡張するファッション ドキュメント』がある。2002年から個人出版物『here and there』を刊行。目下、旧友エレン・フライスとのプロジェクトを準備中。
林央子
様々な媒体への寄稿をまとめた著書『拡張するファッション』は2014年、同名の展覧会となって、水戸芸術館現代美術センターと丸亀市猪熊弦一郎現代美術館を巡回。編著に『拡張するファッション ドキュメント』がある。2002年から個人出版物『here and there』を刊行。目下、旧友エレン・フライスとのプロジェクトを準備中。
プロフィール
文:大神崇 写真:小池アイ子
文:大神崇 写真:小池アイ子

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