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  • 土鍋で作る料理はなぜ一味違うのですか? 
  • 土鍋で作る料理はなぜ一味違うのですか? 

美味しい料理のヒミツは何でしょう? 食材?それともレシピ? いやいや、何か忘れていませんか。そう、調理道具!  料理も、道具の選び方・使い方次第で、一味も二味も美味しくなるんです。

これからの季節、食卓の主役といえば鍋料理です。折角なら、本格的な土鍋でグツグツやりたいもの。 でも、土鍋って鍋料理以外 にも使えるのでしょうか? 長谷園の土鍋なら、鍋料理は勿論、土鍋ごはんや煮物、それにカレーやシチューまで、 幅広く活躍し てくれるんです。そして、長谷園の土鍋を使うと、金属鍋で調理している定番料理も、ぐっと深みを増した味に。 そんな魔法のよ うな土鍋に会いに、三重県は伊賀を訪れ、長谷園の8代目当主、長谷康弘さんに話を伺いました。

長谷康弘(長谷園・8代目当主)

長谷康弘(長谷園・8代目当主)

—伊賀焼の窯元のお生まれなわけですが、長谷さん自身は、いつから焼きものに興味を持ち始めたのでしょうか?
長谷:窯元の家に生まれ、焼きものに囲まれて育ったので、自然と興味が芽生えたのだと思います。 それでも、若い頃は東京の百貨店に勤めていたんです。7 代目だった父は「何してもかまへんぞ」という人だったので(笑)。 けれでも、私は4人兄弟の長男 だったので、いつかは家業を継ぐことを覚悟していました。 転機になったのは、阪神・淡路大震災の時。当時の主力商品であった 外装タイルのキャンセルが相次ぎ、会社は存続の危機に追い込まれていました。 それで私が家に戻り、兄弟達を呼び戻して、立て直しにかかったんです。それから数年、経営回復のきっかけとなったのが「かまどさん」でした。

—「かまどさん」の発想はどこから生まれたのですか?
長谷:どんな焼きものがあったら、食卓がもっと豊かになるだろう? そう考えて、真っ先に美味しくごはんが炊ける土鍋が思い浮かんだんです。 窯元の家なので、いつも食卓には土鍋で炊いたご飯が並んでいました。土鍋ごはんって、どこかほっとする味がするんですよね。 その味を、他の人にも是非伝えたいと思って、家庭でも使える本格的な土鍋「かまどさん」の開発を始めました。 発売当初は売上になかなか結び付きませんでしたが、NHK「きょうの料理」で料理家の有元葉子さんが使って下さったのがきっかけで、 信じられないような反響がありました。問い合わせの電話が殺到して、村の電話回線がパンクした程です(笑)。

—「かまどさん」の名前の由来は?
長谷:父の時代、ガスではなくかまどの薪で火を起こしていたことにちなんで、「かまどさん」と名付けました。 昔は、何処の家 にもかまどがあったんです。私達がいるこの建物も、茅葺き屋根に覆われていますが、昔はかまどやいろりから立ち上がった煙が、 茅葺き屋根を燻して、湿気や虫を払う役割を果たしていました。 そのおかげで、昔の茅葺き屋根は 30 年持ちましたが、今では 7、 8 年持てば良い方です。昔は、生活の様々な部分が相互に関わりあっていたんですよね。
—土鍋でご飯を美味しく炊くコツは?
長谷:「始めちょろちょろ、中ぱっぱ...」と言って、最初に弱火で鍋全体を温め、それから一気に強火で沸騰させる。 普通の土鍋 を使うと、火加減の調節が面倒なのですが、「かまどさん」なら、手間いらずで美味しいかまど飯が炊けますよ。
—土鍋は、料理を美味しくしてくれますし、同時に食卓にワクワクを与えてくれますよね。
長谷:そうなんです。土鍋は優れた調理道具であるのは勿論、食卓に自然と会話をもたらしてくれるんです。 子供の頃、私の家で は、職人さんや父が面倒を見ていた若い人達が寝泊まりしていました。 父は、いろんな事情があって家族と一緒に暮らせない子供 達を引き取って、親代わりをしていたんです。 皆で食卓を囲むと、最初のうちは何も話さないのですが、鍋が煮立ってくると、「そろそろちゃうか」とか言って、自然と会話が生まれるんです。 そのうち、子供達が「俺みたいので良かったら何か出来ることあるか?」とか言って。 それで父が「やる気があるんやったら、明日からでも手伝え」と、そうして子供達にも家業を手伝ってもらっていました。 今でも母の日になると、彼等からカーネーションやカードが送られてきます。父は「なんで母の日だけなんだ!」と羨ましがっていますが(笑)。

—土鍋って、キッチンの臨場感を食卓に持ってこられるから良いですよね。。
長谷:土鍋を食卓に持って来れば、テーブルを囲む皆が料理人になれるんです。 食卓の共同作業を通して、コミュニケーションが生まれるんですね。 長谷園の土鍋が、そんなコミュニケーションのきっかけ作りになれば凄く嬉しいです。
—土鍋を長く使い続けるためのコツはありますか?
長谷:使用後にしっかり乾燥させること。底面を上にして天日干しするか、電子レンジに3分程かけて水分を飛ばしてもいいです。 また、急激な温度変化に弱いので、熱い鍋を急に冷さないようにして下さい。それさえ守れば、一生の台所道具になってくれます。 長く使っていると、貫入(葉脈のような釉薬に入るひび)や火の跡がつきますが、そういった経年変化も含めて、土鍋をと付き合って頂けると嬉しいです。
—長谷家では、土鍋を使ってどんな料理をされますか?
長谷:煮物や肉じゃがをよく作っています。 「かまどさん」は余熱効果に優れているので、煮物を作るのにピッタリなんです。 具材に味がよく染みますし、お豆腐なんかも煮崩れしません。

—おすすめの土鍋メニューを教えて頂けますか?
長谷:シチューがおすすめです。土鍋は遠赤外線効果と蓄熱性が高いので、食材の芯までしっかりと味が染み込んだ、旨味たっぷりのシチューが作れます。長谷園のウェブサイトでは「塩麹トマトシチュー」「牡蛎のクラムチャウダ」「トマトと海老のクリームスープ」など、土鍋を使って作る、様々なスープレシピを紹介しています。

—ドアーズでも、長谷園の土鍋を使った料理教室を開催してるのですが、とても素敵なコミュニケーションが生まれていますよ。
長谷:「土鍋ある所には、団欒がある」というのは大袈裟ですが(笑)、食から生まれるコミュニケーションを、土鍋を通してもっともっと広げていきたいですね。 伊賀の自然の恵みや、先人からの素晴らしい技術を活かしながら、現代のライフスタイルに合った焼きものを提案していきたいと思っています。
伊賀焼について
伊賀では、江戸時代から行平や土瓶などの生活道具である民具が作られてきました。 伊賀は 400 万年前、琵琶湖の湖底にあったと言われています。 古琵琶湖層には湖の生物や植物の遺骸が含まれており、その地層から産出された土を焼成すると細かい空洞ができ、多孔性の素地になります。 そうした特性のある土が遠赤外線効果や耐火性の高い伊賀焼を生み出してきました。 意外と知られていないことですが、日本で採れる陶土で土鍋になるほどの耐火性を持つのは伊賀の粗土のみなのだそうです。
長谷園 伊賀本店
開窯から 185 年を迎える長谷園(1832 年創業)。 敷地内には、窯元が代々暮らしてきた日本家屋「母や」や工房、登り窯、展示室、 体験工房、展望台などがあり、 そのうち 12 の施設が国登録有形文化財に指定されています。 現在は登り窯の代わりにガス窯を使い、 一部の行程に機械を導入していますが、持ち手をつける作業や釉を塗る作業などは、 現在でも職人の手で行われています。また、 商品開発には今でもろくろを使い、試作を繰り返しているのだとか。 ここには江戸時代から続くものづくりの精神が脈々と受け継がれています。
文:宮越裕生 写真:三田村亮

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